銀行カードローンは総量規制対象外や収入証明書不要の宣伝が不可能に
消費者金融よりも銀行カードローンの貸出残高が多いという事実、最近新聞記事を見て驚きました。
2015年、国内銀行カードローンの貸出残高は5兆4377億円。
2015年、消費者金融の貸出残高は3兆円を下回ります。
金融庁が警告!
金融庁が大手銀行、地方銀行を対象として銀行カードローンの実態調査を行っています。
ヒアリングされているのは審査基準だけではありません。
もっとも注意喚起が大きくされているのは「宣伝手法」です。
銀行の宣伝広告には配慮をしなければならないとされました。ただしこれは法律としてではなく「努めなければならない」というもの。
貸金業法で総量規制が施行されたように、銀行カードローンでも注意喚起が法律に変わる日も遠くないかもしれません。
主要となる軸は「改正貸金業法の趣旨を踏まえる」ということ。
~貸金業では~
・自社50万円超または他社借り入れを含めた総額が100万円超の貸し出し審査には貸金業法では収入証明書類を必要としています。
・個人の借入額を比率を3分の1に抑えている総量規制の効果を出しています。
・定期的に信用情報の変動の把握をしています。
これらを踏まえて沖べきであると全国銀行協会は金融庁の調査方針にこたえています。
安易な誇大広告は避けなければならないとなりました。
消費者金融の貸出が急速に減っている理由
消費者金融は2006年12月、貸金業法が改正され総量規制が成立しました。総量規制が開始されたのは段階的に施行が進んだ2010年のこと。
個人が貸金業者から借り入れができる総額は年収の3分の1までと制限されています。
貸金業者は個人の貸付残高を確認しなければなりません。それは自己申告だけではなく、個人信用情報機関に照会をして確認することが定められています。
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年収の3分の1以上を貸し付けた貸金業者は
→行政処分の対象
年収の3分の1以上を借りた個人は
→新規の借り入れはできません。
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年収として貸金業法で認められているのは
・給与
・年金
・恩給
・定期的に受領する不動産の賃貸収入
・年間の事業所得
となっています。例えばこれ以外に宝くじやギャンブルなどによる一時的な収入は年収には含まれていません。
総量規制が誕生した背景は
そもそも個人に対する貸し付けの制限をなぜ法律を使ってまで決めなければならなかったのでしょうか。個々の貸金業者が審査で貸付可能額を設定するだけではだめだったのでしょうか。
多重債務という言葉を聞いたことがあるかと思います。これは個人が借金を返済できない状況に追い込まれるほど負担のある借金を持っている状態です。「返済ができない困難な状況」を指すものであるため、何社からいくら借りたのかという定義はありません。
たとえ2社からであっても、たとえ50万円であっても、本人に返せる見込みがない収支バランスとなっていればそれはもう多重債務の状況にあるといえます。
しかし5社以上の借り入れがある状況を多重債務としてカウントしている傾向があるため、実際に債務に苦しんでいる、多重債務に陥っている方は100万人とされているものの水面下にはその何倍もいると考えられるでしょう。
問題にされているのは「個人の借り過ぎによる多重債務問題」ですが、それは表向きのこと。
個人がいくら借りたいと希望しても、貸す側がいなければ借りることができません。
つまり、問題の根底となっていたのは「個人の借り過ぎ」ではなく「貸金業者側の貸し過ぎ」であったといえるでしょう。
だからこそ総量規制が施行され、貸金業者は個人に対しての貸し過ぎができない状況になっています。
総量規制の効果は
貸金業法が改正された4年後、つまり、総量規制が施行されてから4年が経過したころの日本弁護士連合会の資料があります。
これによると貸金業法改正前には230万人だった消費者金融5社以上からの借り入れは、貸金業法改正翌年の2007年には171万人、さらに2014年には17万人にまで減っています。
減少というよりは激減と呼べる数字でしょう。
また一人当たりの借入残高も2007年の117万円から、2014年には54万6000円と半分にまで減っています。
明らかに総量規制の効果があると考えられます。
ところがいま、銀行カードローンが同じ道をたどろうとしています。
銀行は悪質なことはしないという社会的イメージ
社会的な責任がある銀行という立場。そう考えると消費者金融がサラ金、街金、高利貸しなどと呼ばれていた時代、さらには闇金融が横行している現代でも、危険度の低い安全な借入先であると真っ先に思い出されるのが銀行です。
もちろん銀行には闇金融はないため、メガバンクでも地方銀行でも安心して利用ができます。
相次ぐ過剰貸し付けの事例
銀行カードローンには総量規制のように貸付額を制限する法律はありません。銀行が「総量規制対象外」という言葉をよく見かけますが、そもそも総量規制対象外という言葉は適当ではありません。
銀行は銀行法で管理されるものであり、消費者金融を管理する貸金業法とは異なるものです。
総量規制対象外ではなく「総量規制に関係がない」というのが適当でしょう。
それでは実際にどのような過剰貸し付けがあったのでしょうか。
日弁連には弁護士会を通じてさまざまな相談が寄せられています。
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年収220万円の人に対して500万円を貸し出した、無収入の人に170万円を貸し出した。
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このような具体例を見てみると、到底返済ができない額が貸し出されていることがわかります。
もちろんこれがすべてではありません。
銀行カードローンではいくらでも貸し出しているというわけではなく、総量規制ではないにしろ銀行が独自に返済比率を定めておりカードローンの場合には年収の30%以下程度が適当とされています。
ここには「本来であれば」という言葉が付け加えられるでしょう。
なぜ借りられるのか
当然審査があり、返済ができる額が設定されなければなりません。
そもそも銀行側にとっても「返済されない可能性のある額を融資」というリスクはどのように考えられているのでしょうか。
銀行カードローンの安易な融資が指摘される昨今ですが、その背景にあるのはインターネットを開くと出てくるさまざまな銀行カードローンの広告にもあります。
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・総量規制対象外
年収の3分の1以上も借りられると思わせます。
・専業主婦もok
収入がなくても借りられると思わせます。
・300万円まで収入証明不要
収入を確認することなく申し込みができることを思わせます。
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いずれもウソではありません。
しかし嘘ではないものの、読み手側にしてみればどうでしょうか。年収の3分の1以上でも、収入がなくても、収入を確認しなくても借りられる。
そう考えると消費者金融とは違った「甘い」審査が想像できます。
こういった貸し付け過多によって「返済ができない状況」が出来上がるのは容易に想像ができることです。それでもなお融資を続ける理由はどこにあるのでしょうか。
それが保証会社の存在です。
保証会社とは?
銀行カードローンに申し込みをするときには年齢と安定した収入のほかに「保証会社の保証を受けられること」というのは絶対条件です。
この保証会社とは保証人と同等の役目を果たすもの。
銀行の保証会社は消費者金融や信販などいずれも貸金業者ばかりです。
返済が滞っても保証会社が代位弁済を行うために銀行は痛手を負いません。
これから、銀行カードローンも大きな変化が必要となる時が来たのかもしれません。
今はまだ注意喚起にとどめられていますが、いずれ総量規制のように法律が施行される可能性は低くはないでしょう。